シュッ、シュッ、シュッ、とリズミカルに、手際よく職人が昆布の表面を削っていきます。戦前は150軒程、手すき加工をする業者がありましたが、今では片手で足りるほど。その一つが堺市にある昆布専門店「郷田商店」。その作業場から職人たちが昆布を削る音が聞こえてきます。
「一見簡単そうに見える作業ですが、薄く削れるようになるまでには長年の経験が必要になります。」昆布の厚みや硬さ、包丁の角度、手の力加減。それら全てを考慮して、適度な角度で昆布の表面をひっかくように削り出していきます。
削り出されたおぼろ昆布は向こうが透けるほど薄く、その厚みはおよそ0.02㎜。おぼろ昆布の特徴である滑らかな食感は、この薄さだからこそ味わえるのです。
削りに使われるのは専用の包丁。削りの職人はまずこの包丁の手入れが出来なくてはなりません。人によってクセや力の入れ加減が異なる為、それぞれ職人は自分専用の削り包丁を持ちます。
古くから刃物加工に優れていた大阪・堺。おぼろ昆布を削り出すための包丁もここ堺で作られたものです。アキタを入れると言われる包丁の刃先を曲げる作業。この曲がった刃先でおぼろ昆布を削り出しますが、曲がってなおかつ切れる鋭さを持つ包丁を作れたのは堺の刃物技術があってこそなのです。
おぼろ昆布は、昆布とお酢のみで作られます。材料がシンプルであるがゆえに、素材そのものの味が仕上がりの重要な決め手になります。
おぼろ昆布に使われるのは、色目・香り・味ともに優れた北海道道南産の真昆布。昆布の生育に最適な環境であると言われる、白口浜で採取されたものです。
年度によって生育状況に差があるため、昆布の見極めはとても重要。葉が立派で肉厚の昆布でなければ良いおぼろ昆布を取ることが出来ません。
おぼろ昆布は昆布をお酢に漬ける“漬け前”という作業から始まります。
使用されるのは、創業以来継ぎ足しながら使われてきた醸造酢。昆布の旨味が溶け出した秘伝のお酢です。それぞれの昆布の厚みや季節によって状態が変わるため、均等の水分量になるように漬け方や時間を変えていきます。
漬けた後は一晩寝かせて昆布を馴染ませ、砂を払い、ようやく削りの作業が始まります。
「関東ではお吸い物として親しまれていると思いますが、関西でおぼろ昆布はこぶうどんにしてよく食べられていますね」
そう語るのは株式会社マツモトの松本社長。温かいうどんにどっさりとおぼろ昆布を乗せて、昆布の旨味と食感を楽しむ食べ方です。
「昆布の旨味を味わうのには、おぼろ昆布が一番ですね。特にこのおぼろ昆布は削る前に“目打ち”といって、昆布表面のざらつきを取り除く作業をしています。なめらかで口どけの良さを感じてもらえると思います。」
そんなおぼろ昆布も、以前に比べると昆布漁師や削り職人の数が減り、大量に作ることが出来ない状況。後継者の育成にも時間がかかります。
「堺では昆布の加工自体が伝統産業になっています。地元の産業として残していきたいですね。」
一枚の昆布から、職人が丁寧に薄く削り出したおぼろ昆布です。素材本来の味わいを活かし、口どけの良さ・食感が楽しめるよう仕上げました。お吸い物やうどん、おにぎりなどのトッピングや、昆布巻き等様々なお料理にご利用ください。
簡単レシピ
豆腐のおぼろ昆布蒸し
水気を切った豆腐をおぼろ昆布で包みレンジに約3分(600W)かけます。
お好みでポン酢や醤油をかけて完成です。
青ネギとおぼろ昆布のスープ
お椀に刻んだ青ネギと、食べやすい大きさにちぎったおぼろ昆布を入れます。
お湯を注いで醤油で味を整えたら完成です。
商品情報
商品名
おぼろ昆布
原材料
昆布(北海道道南産)、醸造酢
栄養成分値 1袋(8g)当たり
加工・製造場
会社名:株式会社マツモト
所在地:大阪府堺市西区鳳東町6丁629番地